スター

 

先日、浜崎あゆみのツアーファイナル東京スタジアムに行って来た。
夏のイベントで2本叩く事になっているので、参考のために行ったのである。
結果から言うと、物凄く良かった。
何度か鳥肌が立つ場面すらあった。
本当にいいコンサートであった。

だが行く前は、正直そんなに期待していなかった。
やはりロックよりなものの方が"いい"
というよりもアイドル的なイメージのあるアーティストのライブは、
そのアーティストのファンでもない限り、
生で見られるだけで、嬉しいと言う状況でもない限り、
そんなに楽しくないのでは、
まぁカワイイ子がCD通りに唄っているだけだろう、
という先入観が俺の中にあったからだ。
そしてこのHPを観に来てくれている方の中にも、
僕と同じような先入観を持っている人も少なくないのではないだろうか。

そして、さらに言うならば、実際往々にしてそうなのかもしれない。

僕は音楽業界の人間関係の中にいて、招待という立場で、何度かアイドル的なイメージのあるアーティストのライブに足を運んだ事がある。
しかし鳥肌がたった事など1度もない。
ライブ全体を最後まで観た事など1度もない。
大抵途中で飽きてしまい、ロビーで時間を潰している。
(これはアイドル的なものに限った事ではないのだが)

しかし昨日は違った。
途中で飽きてしまうどころか、本当にアンコールという、
"もっと聴きたい"という気持ちなったのだ。
そして気づけば、本当に拍手していた。
鳥肌がたった。

何故だ?
曲だって、夏に自分の演奏する曲以外は、テレビで聴いた事があるだけで、好んで聴いた事はない。
ルックスも、実際に逢えば、確かに、ありえないくらいカワイイのだが、
それを言ってしまえば、芸能人はみんな実際のところ想像以上にカワイイ。
ぶっちゃけ俺は浜崎あゆみファンではない。
いや、なかった。

しかし本当に感動してしまった。

俺は浜崎あゆみ人気がここまで来たのは、
事務所の財力と、
安室の休業というタイミングの良さと、
曲のクオリーティーの高さと、
本人のルックスだと思っていた。
要するにカワイイ子であれば、別の人間でも良かった・・・と

しかしどうやらその考えは間違っていたようだ。

昨日一緒に行った、とあるロックボーカリストは
「同じ曲を別の同じくらいカワイイ子が唄ってもここまではこなかっただろうね」
と言っていた。

全くその通りであるのかもしれない。
この人気は、本人の努力と人間性からくる、
オ−ラ、カリスマ性から来ているのではないだろうか。

話は5年以上前に遡る。
まだ浜崎あゆみが歌手として活躍する直前、
秋元康が、彼女を売り出す際に、こんなコピーを打ち出していた。
「浜崎あゆみはバカじゃない」
強力にインパクトのあるコピーだった。
こんなコピーを使うには、ごく限られた条件が必要とされる。
その時点で世間からオバカさんと思われている事、
がしかし、本当のオバカさんに、バカなどと言ったらシャレにならない、
実はそのイメージ以上に相当のキレる頭を持っており、
いずれ活躍する可能性が大いにある事。
このコピーは伊達じゃなかったようだ。

そして彼女は俺が言うのも偉そうだが、実際相当の努力をしたのであろう。

3年前、すでにCD売上がオリコン1位になっているにも関わらず、
一度もライブをした事のなかった浜崎あゆみの初コンサートに行った事がある。

まぁこれもエンリケさんの関係で行ったのだが、
正直、なんの変哲もないアイドルのコンサートだった。
場所は赤坂ブリッツ、お客はオタクっぽい男ばかり、

あれからわずか3年、
東京スタジアム2デイズ、ツアー総動員45万人。
鳥肌の立つ先日のコンサート、
なんという成長なのだろう!
俺は本当に感動した。
CDを売る事にも増して大変な、客の動員を増やす作業、
客は正直である。
この不況下においていい加減なライブをすれば客も減る。
そんな中45万人。
これぞまさしく努力のたまものであろう。

そして、そんなコンサートも終わった後であった。
通常ある程度大きな会場でのライブを終えた後は、
出演者、親しい友人、関係者等で、
30分程度の簡単な会場での乾杯がある。

俺も成り行き上、その場に居ることとなった。
人数はざっと50名から100名。
エンリケさんや野村さんとは乾杯したものの、
浜崎あゆみ本人には挨拶に行かなかった。

なぜなら、多くの人々やVIPに囲まれている、この場の主役のもとに、
わざわざ出向くのも、なにかとなぁ〜と思ったからだ、
そしてその場も終わり帰ろうとした時、なんと、あろう事か、
浜崎あゆみ本人が向こうから出向いてくれた、そして
「a-nation(夏のイベント)よろしくお願いします」
とふかぶかと頭を下げてくれたのだ。

別にこの事を自慢しようと思って書いたわけではない。
この時の俺の受けた印象を言いたく書いたのだ。

俺はこの時、いわゆるカワイイ有名人に挨拶されて、
うれしい〜カワイイ〜と思ったわけでもなく、
まるで矢沢に「ヨロシク!」って言われたような気になったのだ、
正確に言うならば、
もし矢沢に「ヨロシク!」って言われたらこんな感じなのかなぁ〜
と思ったのだ。

一般人からギャルはもちろん、
ヤンキーにまでから人気を得てる理由が解った気がした。

人は、特に表現者は、とかく自分を大きく見せようとしがちだ、
そのために、人を批判してみたり、偉そうに振舞ったりするものだ、
いわゆる、弱い犬程よく吠える、というところだろう。
そして俺もそんなひとりであるのかもしれない。

そんな中、大きな成功を収めた余裕からくるのだろうか、
ツアーメンバーでもない俺に対してまで挨拶してくれるその腰の低さが、
逆に物凄い強さ、器の大きさに見えたのだ。

本当のカリスマはわざわざ自分を大きく見せる必要などないのだろう。

俺はさらにこんな事を思った。
「この人のためにいいプレーをしなければ」と

売れているからギャラがいいだろうなぁ〜とか
今後の仕事に繋がるかなぁ〜
という下心は消え去り、
「この人のためにいいプレーをしなければ」
と思ったのだ。
いや思わされたのかもしれない。

おそらく浜崎あゆみは周りのメンバー、スタッフみんなからこう思われているのではないだろうか、
だからあんな団結感のあるコンサートが出来るのではないだろうか、

どんな実力があったとしても人はお互いの支え無しには生きられない。
それを十二分に解っているのだろう。


スターにもいろいろなタイプがある。

"努力しても成功するわけではないが、成功した者に努力しなかった者はいない"

という言葉がある通り、努力するという事は成功するための絶対条件である。
そしてスターになるためには、さらにそれプラス、いい意味での変人性が必要だと思う。

そして、そんな条件を満たした中でも大きく分けると2つのタイプがあると思う。

その変人性が故に、周りのエネルギーを破壊する事によってスターになる者。
その変人性が故に、周りにエネルギーを与えてスターになる者。

どちらがいいというわけではない、
やはり結果を出す事がスターの最大の条件であるからだ。

がしかし本当のスターとは、やはり後者ではないだろうか、
周りにエネルギーを与える事によって、
そして、それが故に、周りの人間から愛される事が出来る人間であるからこそ、
真のスターなのではないのだろうか。
そしてスターで居られるのではないだろうか。

そして浜崎あゆみは間違いなく後者にあたる真のスターだと俺は思う。

 

ゲストコラム 藤神敬也 http://www.h3.dion.ne.jp/~red-rum/


始めまして、藤神敬也です。
牟田様にはいつもお世話になっております。
と、まぁ挨拶は程々に今回のテーマ ”スター” について・・・

”スター”・・・ 何て素敵な響きなんだろうか。

男に生まれた以上、一度はこの ”スター” ってやつを夢見て恋焦がれるものである。

オレ達が子供の頃は、色んな ”スター” がブラウン管の中で、その煌びやかなパワーを大衆に向けて全開バリバリに発していたものだ。

男性大衆歌手がメイクをキメて、TVで歌うなどという荒業を披露した ”ジュリー” こと沢田研二しかり、当時の ”男” 的カッコ良さを一固体に凝縮させ、世のおねーちゃん達を悩殺しまくった西城秀樹しかり・・・

とにかく幼少期から歌う事が死ぬ程すきだったオレは、何となく漠然とではあるが
 ”スター”というものを強烈に意識していたのだ。(バカだな・・・)

しかし、中学生を境にその ”スター” 観が微妙に変化してくるのである。

そう、矢沢の永ちゃんに代表される ”不良系スター” の台頭である。

ギターがあり、バイクがあり、ケンカがあり・・・ の熱い青春時代(笑)には、TVの中の完全体”スター” がウソっぽく映ってしまったのだ。

つまり、”スター” の価値観が ”TVの中でのみ会える完全体王子様” 的なものから
”その辺にいそうな、トッポくてカッコ良い、でも近づきがたいアニキ” 的な存在に移行したって事なのだ。

もちろん、当時でもその ”スター” 観が全てではなかったし、変わらず完全体系の ”スター” も存在していたが。

そして現在である。

言うなれば、”スター” のミクスチャー化。

ありとあらゆる大衆芸能が乱立する今、”スター” の形態も多種多様に見える。

しかし、しかしである。

やはり、”スター” というものは、オレ達が幼き日に感じたもの、すなわち ”完全体” であるという要素が最も重要なのではないかと、非常に思ったりするのだ。

ちなみに、”スター” である要素とは・・・

・自分自身の世界観を完全に表現できる
・自分の分野においての能力が異常に高い
・ナルチシズムに溢れている
・ ”孤独” というイメージ  

ってな感じであろうか。

特に、3つめに関しては、一般人が ”いや〜 オレにはできねーよ” と感じるくらいある意味滑稽でなければいけないと思う。

そしてそのことは、”スター” である最重要ポイントなのだとも思う。

いかなる世界に身を置いていても、これらを満たしている人は ”スター” だなと思えるのだ。

うーん、大変そーだ。”スター” でいる事はすんげー大変なんだろう。

しかし、”スター” はこうあり続ける事で、他者が得ることの出来ないものを得ることが出来る
のだと思う。

ただ、それを貫き通すことで失うものも多いだろうけど・・・

しかも今の時代、いわゆる創られた ”スター” は存在しえないって事だ。

つまり、前記4項目にプラスして、”完全な自己プロデュース能力” を備えていることが、必要不可欠なのだ。

こう考えると、本当に ”スター” の大変さをあらためて思い知らされるのだが、
世の中の”スター” と称される方々には、是非ともその存在で有り続けて頂きたいと思う。

何と言っても、”大衆に夢を与える” という古今東西変わらぬ務めを果たし続けるべきなのだから。

シンガーという職業を選んだオレではあるが、”スター” の器ではないのだと思い知り、
幼少期の憧れは憧れのまま、日々精進しようと励んでいる。

ただ、いち音楽家として自分の限界まで突っ走る不良ニィチャンのままで・・・

 

 

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