僕が最初にヘアースタイルを意識したの、間違いなく中学3年の秋からだ。
それは何故かというと、
愛知県三河地方の殆どの中学校では、その2年半、3年の夏休み終了までを、
今では信じがたい事だが強制的に全員丸坊主にしなくてはいけなかったためである。
そして3年の秋からは、もちろんほとんどの男子は一斉に髪を伸ばし始める。
思えば、ここがヘアースタイルを意識したスタート時点である。
学生時代、まだ自分の中に何も無い時(かといって今あるのかも疑問だが)
自分を主張する一番の手っ取り早い方法はルックス、ヘアースタイルである。
わずかに伸び始めた髪で皆それぞれの自己主張を始める。
そんな中、僕は2つの大きな強運に恵まれた。
一つ目の強運「つむじ」
ヘアースタイルを意識するとは言っても、校則で丸坊主が決まっているような学校で、
当然のごとく整髪料が許されているわけはない。
とは言っても卒業式シーズンになれば、パンチパーマとか出てくるわけで、
まぁそのシーズンになれば、先生達もあきらめるわけだが、
僕のいた学校では本気で強い先生が何人かおり、
体罰なんて日常茶飯事であったため、やはり卒業間近までは校則に従わざるおえなかった。
という事は・・・・・整髪料は使えない。
もし使おうものなら、冬でも水で洗い落とされた。
そんな当時、巷で流行っていたヘアースタイルは・・・
マッチヘアー!
そう、たのきんトリオの近藤真彦がしていたヘアースタイルだ。
どんなヘアースタイルというと、
短髪で片側だけを上げて、片側を下げる。
今で言えば、河合俊一ヘアー! なのだが、
当時は相当”ナウイ”ヘアースタイルであった。
しかも簡単!短髪でも出来る!中学生にピッタリ!
しかし、整髪料無しに片側上げ続けるのは難しい・・・
皆、断念・・・
しかし!!
なんと、僕には、頭部前方右に“つむじ”があるのだ!
なにもしなくても右前髪が自然に上がってしまう!
まさにマッチヘアー!
僕は堂々とこのヘアースタイルを手に入れたのだった。
僕はこの時かなりの優越感、自己主張をした感を手にした事を覚えている。
”俺は流行りのマッチヘアーをいち早く取り入れている〜”と
しかしこの時小さな失敗を犯した。
ある時友人の島田(仮名)にこう言われた。
「マッチって左の前髪を上げているんじゃなかったけぇ〜」
「え”っ〜そうだったっけぇ〜」
しまったぁ・・・・・
テレビで見るマッチと、鏡に映る俺、同じ髪型に見えたが、
鏡は逆に映るという事を忘れていたぁ・・・。
しかし、ここは間違えたのではなく、ムタオリジナルという事で乗り切った。
2つめの強運「校則のズレ」
そんな中学時代も終わり、高校へ入学した。
その時気づいたのだった。
僕の中学出身以外の男子は皆、ほぼ丸坊主じゃないかぁ〜!
そう、他の付近の中学校では丸々3年間丸坊主でなくてはいけなかったのだ。
そんな当時、巷で流行っていたヘアースタイルは・・・
チェッカーズヘアー!
そう、フミヤ率いるチェッカーズがしていたヘアースタイルだ。
どんなヘアースタイルかというと、
前髪の一部だけを異常に長く伸ばし、横は2ブロックにして、思いっきり刈り上げる。
モヒカンで髪を立てていないような感じだ。
このヘアースタイルをマネしたかった人は結構居たはずだが、
いかんせん長い前髪が無いとチェッカーズヘアーにはならない。
そんな時に僕の中学出身者だけは、他の中学より半年も早く髪が伸ばせたため、
チェッカーズヘアーへするために物理的に断然有利となった。
そして僕は真っ先にこのチェッカーズヘアーを取り入れたのだった。
僕はこの時かなりの優越感、自己主張をした感を手にした事を覚えている。
”俺は流行りのチェッカーズヘアーをいち早く取り入れている〜”と
しかし何度かチェッカーズヘアーを繰り返している時に小さな失敗を犯した。
チェッカーズヘアーの難点は横の部分を短く保たなければならない、と言う事である。
しかしお金の無い高校生、そんなに頻繁に髪を切りには行けない。
そこで、ある日、貧乏作戦で、
「横に刈り上げ部分をいつもよりさらに短めに」
と注文したのだ。
すると、本当にものすごく短くされてしまい、もう、まるで髪が無いようになってしまった。
その様はチェッカーズというよりは、サザエさんの妹、ワカメちゃん・・・・・
翌日、横の頭皮を鉛筆で塗ってみたのを覚えている。
しかし、そんな俺の失敗など比べ物にならない程の失敗を犯した男がいた。
友人 島田(仮名)
彼もまた、ある日「チェッカーズヘアーにする」と
美容院、いや、町の床屋に行った。
数時間後、家に彼が遊びに来た。
さて、彼の若干、ヤンキーぽかったヘアースタイルはオシャレに変わったのだろうか?
すぐさま玄関に出た。
そこには知らないオジサンがいた・・・・・
いやぁ・・・あれっ・・・
それは、しっ、しっ、しっ、しまだっ・・・・・
チェッカーズ?????
それはチェッカーズヘアーじゃなくて・・・・・
アイパーだよ!!!!!!
「やっぱそうだよなぁ・・・・・」
「やっぱって、どっからどう見たってチェッカーズじゃなくて、アイパーじゃん!」
「前髪長いどころか、おもいっきり丸まってるよ!」
「チェッカーズみたいにしてくれって言ったら、床屋のオジサンがハイって言ったんだけどなぁ〜」
「そのオジサン絶対、チェッカーズも杉良太郎も一緒にしてるよ!」
それから俺は、彼には悪いと思いつつも、しばらく呼吸困難になるくらい笑った。
あれから彼はどうしたんだっけなぁ〜?
ヘアースタイル、それは、その人の第一印象を大きく左右する。
なので大事にしたいものである。
ちなみに、毎日8分かけて髪、いや頭皮を洗うと、減りにくくなるらしい by野村義男さん