夏休みの宿題

 

思えば僕は夏休みの宿題にどのようなものがあったのか、ほとんど覚えていない。

夏休みの宿題に対してどのような思いがあったのかも覚えていない。

ただ、中学生の夏休みには宿題をやりに、始終友達と図書館へ行っていたのは覚えている。

宿題をやりにと言うよりは、宿題を理由に図書館に集合していたと言った方が正しいかもしれない。

わざわざ騒いではいけない場所に行って、小声でしゃべって笑いをこらえるのが楽しかった。

夏休みが故に、会いたくても会えない女の子に会えるのでは、なんて青い気持ちもあった。

誰とも遊ぶ約束をしなかった日でも、とりあえず図書館に行けば、誰かいるだろう、というのもあった。

今思えば現代の十代と比べてなんて素朴で幼かったんだろう。

家に一人でいるのは暇で寂しいから、あちこち出歩くという点では同じなんだろうが、そこが渋谷や歌舞伎町ではなく、蒲郡市民図書館、しかも夕方五時には閉まる。

海と山に囲まれた人口六万人の小さな町愛知県蒲郡市(ガマゴウリシ)

現代の都会の中学生の一部のように、プチ家出、援交、朝まで町をフラつくなんて事は有りえるわけもなく、まるで映画のワンシーンのごとく、山に探検に行ったり、神社で缶ケリをしたり、海でキャンプをしたりしていた。

そんな町で育ったからだろうか?

僕がある夏休みに作った工作は実に素朴である。

ちなみに僕は、今でも若干そうだが、当時は特に"常に人と違っていたい"という気持ちが強かった。

それは、当時中学生男子の間で自転車をつや消し黒で塗りつぶすというのが流行っていた中、一人まっ黄色のヤマハのモトクロスバイクに乗っていたという事にもあらわれている。

そんな素朴ではあるが、ちょっと変人の僕が作った工作は・・・

夏なのに、「卓上温風器」

とは言っても、もちろん普通の扇風機にもなるのだ。

しかしながら、ただの扇風機ではつまらないので夏のうちから冬の事も考え温風も出るようにしたのだ。

今気づいたが、僕はこの頃から常に先の事を優先して考える癖があるようだ。

そんな癖は好きでもあり、嫌いでもある。

話がそれた、卓上温風器がどんなものか説明しよう。

外見は十五センチ四方の木の立方体であり、1面だけに電熱線が張られている木箱である。

そして、その中には強力モーターが入っており、その先にプロペラが付いている。

二つのスイッチがあり、一つは電熱線のスイッチ、一つはモーターのスイッチ。

実に見たままの単純明快単細胞な電気製品である、モーターのスイッチだけを入れれば、夏用扇風機、電熱線のスイッチも入れれば、冬用温風器。

これが予想以上の温風が出る、ただし気をつけないと、その電熱線剥き出しという構造上アッと言う間に焼けどをするという欠点も持ち合わせる。

僕はこの自分で作った卓上温風器を結構気に入り、夏の間、机の上に置いて扇風機として使っていた。

宿題をしながら、その風にあたるのは、なかなかのものだった。

やがて秋が来た。

卓上温風器本領発揮の季節である。

確か夏に温風器として試運転したところ、期待以上の温風が出た。

しかしながら夏という事もあり、すぐに電熱線のスイッチは切った。

ある秋も深まってきた夜の事であった。

コタツに入りながら宿題をやっていると、なんと手元が冷たいではないか!

卓上温風器の出番である。

やっとその本来の目的を果たす時がやってきた。

僕はその二つのスイッチを夏の試運転以来始めて入れてみた。

こごちよい温風が吹き出した。

手元も暖まり、宿題もはかどってきた。

我ながらいいものを作ったものだと自画自賛した。

しばらくすると異臭がしだした。

その臭いは卓上温風器からであった。

よく見ると電熱線の熱でプロペラが溶けていた。

 

ゲストコラム 寺岡佐和子 BICYCLE & ESB のボーカリスト

こんにちは、皆さん。はじめまして。

私「インド小料理屋 佐和」(不定期営業)の おかみ 寺岡佐和子でございます。
どうぞ 御贔屓に。

今は 夏休み真っ最中。
みんな、夏を楽しんでるかな〜? いぇ〜い!

夏休みの宿題って 
「今年こそは、毎日1ページずつやって、早めに終わらせて遊ぶぞー!」
と 休み始めは 意気込みつつも、
わずか4,5日で 遊びモードに切り替わり、

あとさき考えず、約一ヶ月間 狂ったように遊びに遊び、

いよいよ押し迫った8月25日頃、遊び疲れてふと我に返り、
それまで遊び呆けていた自分に
「私ってば バカバカバカ!」と憤りさえ覚えつつ、
そこからは、一日経つ毎に焦りもピークに、

そして 30,31日は、見事な集中力で
今まで 一日1ページも読めなかった つまらない本も
一晩で一気に読み上げ 読書感想文を書き、

絵日記も 夏休み中の新聞から天気を写し取り
「8月7日 今日は、プールで泳いだ。楽しかった。」
「8月11日 今日は、雨が降ったので 一日中ジグソーパズルをやった。楽しかった。」
などという、無味乾燥な日記を即席で書き上げ、

最後に残った 算数のドリルを 電卓で チャチャッと計算して
途中で うたた寝しつつ、夜中に再びガバッと起きて
眠い目をこすりながら、なんとかかんとか 形にして

9月1日には、すっかりヌケガラ状態で、
目の下にクマを作って宿題を提出したものでした。

多分、ほとんどの子供達がこのパターン? 
え? 私だけ? うっそ〜。

でもこういうのって、大人になってからも そうは直らないよね。
やはり、8月31日という締め切りが有ってこその 集中力なのです。

逆に 締め切りに向けての集中力のお陰で、
普通の状態じゃ できないような すごく良いものができたりする。
・・・なーんてね。それは言い訳?
ブラボー8月31日!

そうは言っても かなり重要な「締め切り」。
気が付くと 人は日々、小さな約束や、締め切りを塗りつぶしながら
生きているのです。
それが、日々の張り合いになってたりして、それもちょっと寂しい。

何もない off ・・・という日も嬉しいけど、
1日って、何もしないと アッという間に終わっちゃうでしょ。
そんな日が続くと、人は不安になるのです。
遊んでばかりでは いられません。

誰か私に、締め切りをください。ウッ。

そうそう、だから夏休みの時間の使い方ってのは、
フリーで仕事するようなもんなんだよねぇ。
「毎日、自分できちんと計画立てて生活しましょう。」なんて、
とても楽チンのようだけど、
決まった時間に学校や会社に行ってた方が 
ホントは簡単に充実した(ような気分になれる)生活が送れる。
野放しになると、案外何していいのか判らなくなったりしてね。

自分で計画立てるのって、自分の好きなように出来る分
サボることも簡単に出来ちゃって、
「あ〜、今日も有意義な一日だったわ。明日も頑張ろう。」
・・・なんていう毎日を送ろうと思ったら、
実は 自分にムチ打って、ものすごく努力しなきゃならないのです。

それを ちゃんと出来る人が、フリーで成功してるのかもね。
このコラム書いてる自由業の方々、みんなエライわ!

私なんて、今 毎日が夏休みだけど、ホント ものぐさ太郎でさぁ、
うっかりすると すぐ一日無駄に過ごしちゃう。あぁ、ダメ人間。

できれば私は 時間がたくさん有る時は、何か作りたいと思うんだけどね。
何か作ってる時というのは、小さな喜びを感じたりするものです。
しかし、なかなかできるもんじゃないんだな、これが。
自分をコントロールするのって、とっても難しいこと。
私みたいに 毎日飲んだくれていては いけませんよ。ギクッ!


そういえば話は違うけど 小学校3年の夏休みに、
図工(?)自由研究のたぐいのものを作らなきゃいけなくて、

やはりギリギリになって 苦し紛れに、雑誌に載ってた「晴雨計」という、
天秤の片方に乾燥した塩、もう片方に同じ重さの消しゴムを吊して、
雨が降りそうになると空気中の湿気で塩が重くなり、雨が予測出来る。

というものを作ったら、
なんと担任の先生がいつの間にか
「西宮市の子供ナントカ」に応募して、うっかり入賞してしまい、
市長さんから表彰されたことがあったなぁ。

なんか、ものすごく世間に申し訳なくて、
子供ながらに、「世の中、パクリで のし上がることもあるんだなぁ。」
・・・と思ったものです。
とかくこの世は、不条理なことばかりです。
人生って、そんなもの? ま、いっか。

・・・歌謡曲バンド演ってた方が、お客さんに喜ばれたりしてね。 あ、しまった!


とりあえず、私の夏休みの宿題は8月31日の E.S.B. だね。

そう・・・奥様は歌手だったのでーす!

E.S.B. も 締め切りギリギリの集中力バンド。 
全員の集中力のすばらしさを 御覧になって下さい。
・・・あ、ウソウソ、次回は しっかり準備しましょうね。

みんなー、8月31日は 夏休みの宿題を済ませてから来なきゃダメだぞ〜。

 

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