白と黒

 

       -黒?-

「見たくなければ帰りますけどね!」 と僕はいつものキメ文句を行った。

当時19歳のぼくは、いろんなバンドをしながらデザイン専門学校に通い、様々なバイトをしていた。

そんな頃のバイトの記憶で忘れがたいものがいくつかあるが、 その中でも、もっとも印象深かったのが学習教材のセールスマンのバイトだ。

50万円もする学習教材を、小学5年生のいる家庭に限定して訪問販売するのだ 教材の内容は、中学校3年間分の、高校受験に備えてのドリル。

契約してくれた家庭には、その子が中1に成った頃、つまり1年半後の忘れた頃に、ダンボール5箱くらいに、その教材が詰め、一気に送りつけておしまい。

ひどいもんだ。

そんなもんが50万、ほとんどサギ ちなみに売った人は1割の5万もらえる。

そんなもの売れるわけないでしょう?と思うだろうが、これが売れる。

なぜなら僕を含めほとんどの人は、特に「俺は違う」と思ってる人ほど騙されやすいからだ。

手口はこうだ。

午後4時〜6時頃、家には子供とお母さんだけがいる状況をねらう。

「簡単なアンケート調査でーす。」といい、玄関に入れてもらう。

家族構成や受験に対する意識調査などのアンケートを行う。

帰り際に、5問程、問題のついたプリントを渡して、こう言う。

「サービスです、よかったらチャレンジしてみて下さい。」と。

その日は素直に帰る。

翌日、アンケートの結果、子供が長男長女の家庭(要は受験慣れしてない)だけを再度訪問する。
そしてこう言う「サービスで答えあわせしますよ!」

実はこの5つの問題の中の1問には、5年生じゃ解けないものが混ざっている。

そして案の定ほとんどの子供が間違っている。

そこでぼくが丁寧に正しい答えの出し方を教える。

ここで僕の信頼はいっきに上がる。

ここからがセールストークの始まりだ!

マニュアルトーク

「うーん70点ですね、このままの成績でいくと、高校受験で狙える学校は・・・・・ 怖そ〜な、お兄さんやお姉さんが、いっぱいいる所になっちゃうかな・・・・・ 怖そうだね〜、そんなのやだよね〜」
のような内容を、感情をこめて話す。

さらにお母さんの苦手な数字もからめて話す。

ここで母子に十分すぎる程、受験に失敗した時の恐怖を植え付けておく。

そしてこう言う。 「内申書って知ってる?」

ほとんど人が知っている、しかし見た事のある人はいない。

「実はお兄さん、今そのコピーを持ってるんだけど、見たい?」

見たそうな母子。

さっとコピーを出す。

母子は食い入るように内申書を見る。

この時点で興味なさげな家庭であれば、話しを切り上げさっさと帰る。

誰もが恐れていた、生活態度が記されている場所がある。

そこについて説明する。

「自分のクラスの生徒が受験に失敗すれば先生の評価も下がるんだよ、ここにわざわざ日頃の態度が悪い、なんて書く先生なんているわけないよね。」

確かにそのとうりだ!と母子も納得。

「じゃ内申書では、なにが大事なんだろう!」

母子共に興味津々。

「中学校にはね、中間テスト、期末テストというものがあるんだよ、そして、その結果が内申書に書かれて希望校にも送られるんだよ!これが大事なんだよ!だからいい点取らないといけないよね」

そして間髪入れずに続ける。

「じゃ、その中間、期末テストはどうしたらいい点が取れるだろうか?」

「どんな傾向の問題が出るかを知っていれば、いい点取りやすいよね」

そりゃそうだ!という顔をする母子。

「そのテスト問題ってどうやって作ってるか知りたくない???」

もちろん!という顔をする母子。

「先生の持ってる教科書って、すごく厚いでしょ、実はね、あの後ろにね、例題が載っているんだよ。それで、ほとんどの先生は、そこから問題を出しているんだよ。」

へ〜なるほど〜と母子共々納得。

「お兄さんね、実は、中日新聞関連の会社の方から来たんだけど、その内容とよく似た問題ばっかり載った問題集持ってるんだけど見てみたい?」

母子共々 えっ と微笑む。

そこでその問題集を、チラッと見せる。 あくまでもチラッと。

そしてそこでいつものキメ文句

「見たくなければ帰りますけどね!」 と言い本当に帰る。

あわてる母子。

ここで「待って!」と言われたら立場はいっきに逆転する。

商品を見てもらうのではなく、見せてあげるのだ。

この後、契約書に印を押してもらうまでに商品の説明はほとんどいらない。

溺れかけた子供に泳げないお母さん、そこに50万円の浮き輪を持って現れた僕。

お母さんは浮き輪の質や値段などかまっていられない・・・からだ

そこで僕はダメ押しをする 「塾にいけばウン百万ですよ、近所のお母さんも安いもんだって契約してました、内緒にしてくれと言われたから誰とは言えないんですけどね」と嫉妬心すらもあおる。

そしてもう一度 「興味なければかえりますけどね」  

母子あわてる。
おかあさんは思わず印鑑をとりに・・・ こうして50万のインチキ教材は売れてしまう。

いや、もちろんセールストークをした家庭の10件中1件あるかないかだし、それ以前に大抵の家庭

では門前払いをくらうのだが普通なのだが。

こうして牟田悪徳セールスマン 5万円ゲット。         

       -白?-

僕は自分で言うのもなんだが故意に人を不幸にしようとして騙した事は一度もない。

別に威張る事でもない。

ウソをついたり、傷つけたりした事はあるが、騙すという行為は手品を除けばないと思う。

結果的に今回のバイトのように、気づかぬうちに、人を騙した形になってしまった事は、あったかもしれないが。

結果的に・・・気づかぬうちに???

そう実はセールスマンをしていた僕自身が騙されていたのだ。

なぜかと言うと僕はこの商品を、なんと正義感で売っていたのだ! 正しい事をしてると!

もっと言うなれば、人助けでもしてると! 騙す気持ちなどカケラもない。

もちろん雇う側も、バイトの僕らには「これはいい商品だ!」と言っている。

セールストークの練習をさせられてる間に、気ずかぬうちに自分を正当化する自己暗示にかかっていたのだ!

セールストークの矛盾には気ずいたのもかかわらず・・・

そう、何年かごとに必ず出没する、マルチ商法、インチキセミナーや、インチキ宗教。

それらの勧誘員の中にはおそらく罪悪感はなく、マインドコントロールされ正義感でやっている者も少なくはないだろう。

現に僕の知り合いでも何人もいた。 「それはインチキなんだって!」 とどれだけ説明しても、初めは大抵聞き入れてもらえないものだ。

当時19の僕は突然気づいたのだった、

これはインチキだ!知らぬ間に、人を騙すとんでもない加害者になっている!と。

その後すぐにバイトはやめた。

後にマインドコントロールに少々興味を持ち、あえてインチキセミナーに足を運んだことがあった。

すごい世界が広がっていた。成功者といわれている人が教壇に立ち、ホワイトボードを前に、当たり前の事を予言者にでもなったかのように熱弁していた

「みなさん、今の世の中の仕組みに不満やストレスを感じていませんか!将来不安ではありませんか?私と一緒に新しいビジネスを始めましょう!」と。

とんだインチキ儲け話しをしている。

そして、みんなそれを真剣に聞いているではないか・・・

そのビジネスを始めるには最初に50万いるが、今決心すれば後に億単位で儲かるらしい・・・

アホか!逆に聞きたい!ストレスもなく、将来になんの不安もない人なんかいるのか??

人は案外騙されやすいものである・・僕もそうだが・・・。

特に将来の不安話しや、儲け話しには。

私はそんな事ないと思っているアナタ、 女性誌やら、テレビやら、暴露系雑誌、音楽雑誌のインタビューとか真に受けてないですか?

       -白と黒-

いくら自分が騙されていたからと言っても加害者は加害者だと思う。

いくら多重人格だろうが、未成年だろうが罪は罪だと思う。
限りなく黒に近い白い出来事は世の中に多く存在する、

それらに巻き込まれないように努力する事もまた大切である。

必ず誰かがどこかで見ている、 良い事も悪い事も、がんばった事もなまけた事もいつかきっと自分に帰ってくる。

 

ゲスト ペンネーム chanmar茶帯 2級 夢は自分の関わったアーティストが武道館でライブをする事と語る、某アイドル3人組のマネージャー
はじめましてchanmar茶帯2級です。今回は「白と黒」をテーマに少しの時間、 お話したいと思います。
あっ!その前に遡ること1ヶ月前、とある酒盛り屋にて 牟田さんと出会い、ラジオにも出演し、コラムまで書いている始末。もともと 物書きに恋心を寄せていた私にこんな機会を与えて頂き感謝します。
「活字」「漢字」という表現方法はかの有名な孔子が・・・・・・・・・・ この続きはお酒の或る席にて何方かに犠牲になって頂きます。

さて今回の「白と黒」というテーマですが、簡単そうにみえて実に深い!!と 先に逃げておきます。
最初、インスピレーションで思ったことは 「対義語」

天使=悪魔  白星=黒星  朝=夜  白髪=黒髪   etc

兎に角、常に 「対比」 する存在であるのだが、そう考えると実に面白い。
何かと馴染み深い 「色」 なのに対比する位置にいるではないか。
人と同じものを好む日本人はこの色に敏感である。 例えば車。
汗水たらして念願の愛車を手にしたとしよう。だが、日本で売られている 1位、2位を争う車の色は、白と黒 ほかならない。確かに無難な色であることは 間違いないのだが、一番の理由は 「飽きない色」 なのだろう。
そもそも同じものを好む我が国、日本。そのルーツを辿れば農耕民族である。
よく世界から日本は 「ハングリーに欠ける」 と言われるが、どうしても 拭うことのできない遺伝子達が脈々と伝わっている証なのだ。

人類の原点であるアフリカ系の祖先は所謂、「狩猟」 という手段で遺伝子を 今に伝えてきた。
一方、日本はというと穀物、農作物を耕し 「農耕」 の技術で 生き延びた。
この2つは 「白と黒」に分かれるくらいに対比している。
一つ 「責任」 を例に挙げてみよう。
狩りをする部族は当然、生き延びるために 男は毎日、狩りに出かける。
その日の獲物が捕れなければ家族は何も口に することができない。
当然、責任は狩りに行った 「男」 にある。
一方、田植えをしている民族は、その年が不作であっても田植えをした人に 責任はない。
何かというと 「天候」 である。この責任能力の差はあまりにも 大きい。

テーマがそれたので、ここで戻すことにしよう。
折角、「音楽」 という共通点で 牟田さんと知り合えたので音楽について少し。
私は 「ボブマーリィー」を尊敬する 一人なのだが、彼の父はイギリス人で母はジャマイカ人。
この言葉が適切で あるか解らないが、白人と黒人のハーフである。
当時のジャマイカは2大政党にわかれ、争いを繰り返していた。当然、政治非難で あったり、人種差別について歌詞にした 「レゲエ」 にも火の粉は降りかかる。
カリスマ的人気を誇ったボブマーリィーには当たり前であった。事件は起きた。
ライブ2日前、彼は寝床を襲われ、拳銃で腕を打ち抜かれた。
にもかかわらず ライブに出演し、国民の声となって歌い続けた。
今回のテーマになっている「白と黒」に当てはまるかどうかは別として、 そのテーマで彼も悩んだ一人である。
彼は一度、イギリスに戻るが、2年後再び故郷ジャマイカに帰ってくる。
首都キングストーンでのライブ公演、観客5万人を動員するなか、彼は魂の声を 振り絞る。
このライブは危険を伴うライブであった。当時、争いの絶えない2大政党 のリーダーを招待していたのだ。
ライブの興奮と物々しい警備が張り詰めた中、 なんと彼は歌の最中にその政党のリーダー二人をステージに上げたのだ。 彼は歌詞の中でこう言った                    

「・・・今こそ握手しましょう・・・」

国民が見つめる中、党首同士とボブマーリィーが笑顔で握手を交わした。
魂の歌声が届いた瞬間である。
苦痛に耐え忍んだ国民の頬に安堵の雫が すべり落ちていった瞬間である。
彼がそして音楽が国を動かしたのだ。 不景気と騒がれている日本だが、まだまだ平和な日本。
彼のように国を動かす という大それた事は出来ないかもしれないが、聴く人そのものが人生に影響を受け 勇気をもらい、心に響く音楽を作ってゆく事がアーティストの使命ではないか・・・ ・・

私自身、錯覚しやすいのだが 「音楽とは自由」 ということ。
色んな思想や相反する言動をも変えてしまう音楽。私は彼に敬意を表したい。

「白と黒」・・・・・・・・やはり奥深い。   最後に彼の言葉でお別れします。

「僕は歌を歌いたいのではなく、みんなが必要とするから歌うんだ」
「僕は人を救うために生まれてきた」   


個人の記憶の中で書いているため多少のズレ、発言はご了承ください

 

 

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