よくドラマや映画などで青春と言うフレーズを聞く、がしかし実際にこれぞ青春!などと思う出来事はそうそう起きるものではない。
でも僕は過去に、これがまさに青春と言うものなのかぁと思った出来事がある。
時は15年前にさかのぼる、僕が高校2年の時だ。
当時僕は地元愛知県蒲郡市でアマチュアバンドをやっていた、そしていろんなアマチュアバンドイベントに参加していた。
そんなおり毎年あるイベントのひとつが後継者がおらずなくなる事になった。
蒲郡という街は本当に小さく、ライブハウスも無ければ練習スタジオもなく、バンド少年にとって文化祭や街の小さなイベントが貴重な表現の場なのだ。
それが1つ無くなると言うのは僕らにとって結構ショックだった。
その時ふと思った、だったら俺がやればいいじゃん!と・・
思い立ったが吉日で、すぐにメンバーに電話した。
みんなもとまどいながらも賛成してくれた。
しかしバンドを始めたばかりの高校生、なにから手を付けたらいいかわからず途方にくれた。
そして僕は他のイベントに参加し、どうやって運営するのか、なるべく内部にはいって、そのやり方を盗む事にした。
結果例えアマチュアとはいえたった1日のコンサートをやるには相当大変でそれなりにお金もかかる事がわかった。
ライブハウスが無い街にとって選べる会場は最小でも市民会館小ホール、それなりに人も入れなくてはいけないし、照明、音響の手配、チケットやちらしのデザイン印刷、そして一緒に協力してくれるバンド探し、やる事はたくさんあった。
知識もお金も乏しい僕らはそれなりにアイデアを出し合いなんとか進めていこうとがんばった。
こうしてコンサートまでの2ヶ月間、高校生にしてはハードなスケジュールの日々が始まった。
学園祭とは違いお金の問題にぶちあたった時などは、今思えば無謀なのだが「チラシに広告を出すから」などと飲食店等のスポンサーをみつけた。
一緒にがんばってくれるバンドもみつけた。
朝までマージャンをした日でも他の学校にチラシをまきに行った。
安い音響や照明、印刷会社を見つけさらにねぎった。
チケットを売るためにバイト先のレストランで無理矢理ミニライブをした。
時には手伝ってくれてた女の子との間に恋もうまれたりしていた。
ミーティングで飲み過ぎで道路で寝たりした。
駅の壁や電柱に勝手にポスター貼って怒られた。
今思えば俺ら本当になんの損得感情もなく、ただコンサートを成功させたいという思いだけですげーがんばった。
普段はなにかとうまくいかない事があると人のせいにばかりしてた俺らが。
そして遂にコンサートの日がきた。
朝9時から会場入りし出演者、手伝ってくれる子全員で準備をした、結果的にこの日のために業者以外の人は無償で40人もの人が関わってくれた。
そしてライブが始まるとなんと500人近い人が集まっていた。
去年は100人もいなかったイベントだったのに。
僕らは本当にうれしくて興奮した。
ライブも大成功に終わった。
この後僕らは当然のごとく打ち上げに行った。みんな飲みまくった。
宴もたけなわとなり、というか閉店になり、みんな外に出た。
ここからが語るも恥ずかしい青春ドラマの始まりだ。
外に出た1人のヴォーカリストが突然「ありがとうー!」と半泣きで僕に抱きついてきた、すると他の数人も同じように抱きついてきた。
僕も不覚にもわけもわからず半泣きになった。
するとなんと周りをみたら、みんなわけもわからず思いっきり泣いているではないか。
はたから見ればかなり気色悪い集団である。
この妙な興奮状態はなかなか収まらず解散しにくいムードとなった。が、かといってもう開いてる店もなかった。
その時一人が「家は広いから家に行こう!」と言い出した。
みんなも賛成したのだが、ここで1つ問題が発生した、
その家は現在地から10km以上も離れていたのだ!
お金ももちろん車もない俺らは悩んだ、
そして1つの結論が出た。
今思えばよくもこんな無茶な案に誰も反対しなかったと思うのだが、
俺らはなんと、そいつの家に向かい蒲郡の夜空の中、走り出して行ったのだ!!
10km以上もあるというのに・・・
あたりは真っ暗だというのに・・・
朝から準備して疲れていたはずなのに・・・
学校のマラソン大会が大嫌いだったはずなのに・・・
本当に走り出していった!
気色悪い集団度はさらに増すこととなった。
今思えば、あの時の俺らをここまで突き動かしたものはなんだったんだろうか・・・
そう言えばあれ以来自分自身の事で感動して涙を流した事などあっただろうか・・・と思う。
よくよく考えればたった1回のライブを企画制作しただけなのだ、しかしこんなにもうれしく感動した。
当時の感受性を忘れないまま生活していきたいものだ、と思う今日この頃である。
ちなみに10kmの道のりを走り出した俺らは、そのあまりに気色悪い集団が上に、いやあまりに気持ちのいい集団が上に、途中あと一歩というところで警察に補導された。