SHORT ESSAY
   


 

 白 夜 の 国 か ら 旅 日 記

 この秋に、初めてエッセイ集と呼ばれる物を出版しました。実はこのエッセイ集、きっかけとなったのは、この連載のおかげなのです。以前「ストックホルムからの手紙」というタイトルで原稿を書いたことがあるのですが、その時にいつの日にか、一冊の本としてスウェーデンでの生活を書いてみたいなと、密かに考えていたのです。ですから、本のタイトルもそのまま、「ストックホルムからの手紙」としました。

 なんとなく優雅な印象を持つタイトルですが、実はこの本が完成するまでの道のりは、優雅という響きからはかけ離れたものだったのでした。

 本の企画が決まった時には、発売日も決まりなんと、その猶予はたったの2週間。書き溜めておいた原稿など無かった私は、その限られた時間の中で原稿用紙百枚分を書かなければいけないうえに、写真も撮らなければなりません。本を出したい一心で引き受けたものの、作家でもない私には荷が重い条件でした。東京にいれば、電話もなるし、友達の誘惑もあります。いずれにせよ日本を離れてスウェーデンで作業に取りかかる事で覚悟を決めました。八月の十五日に成田を出発し二十六日に帰国するまでが私に許された時間です。さすがに十五日の日にストックホルムの街に到着した私は、あまりの不安からかそれまでに経験した事のない胃の痛みに苦しんでしまいました。しかし、だからと言っていきなり休養するわけにもいかず、時差の残る身体を利用して、午前四時に起床して、ただひたすらパソコンに向かいました。

 そんな私を助けてくれたのが、作家で日頃から交流のある谷村志穂さんです。

 原稿書きに行き詰まると、日本の友達にメールを送る事で気分転換をしていたのですが、谷村さんからのメールは私をとても勇気づけてくれました。「本当に書き上げることが出来るのかしら?」という私の問いにも「大丈夫。書き続けているうちにライティング・ハイという状態が訪れてくれるはずだから、頑張って」とのアドバイスとともに、谷村さんが今執筆中の新しい小説の内容を添えてくれました。「今、この時間、締め切りに追われて、必死になって書いているのは、私一人ではないんだ」という気持ちがなによりも嬉しく感じられて、谷村さんの教えてくれたライティング・ハイなるものも経験出来た気がし
ています。

 もともと、書く事は嫌いではなかったので「作家生活」に憧れたりもしてましたが、その甘い考えは、自分自身が一冊の本を書きあげてみて、どうやら捨てなければいけないなと実感しています。

 それでも、書く事によって、さらに書きたいことは増えていくのも事実の様です。今回は、スウェーデンに限定してのエッセイでしたが、書く視点で物事を観てみると、それまでは気が付かなかったことも沢山目に飛び込んできました。同じ事が写真にも言えて、ただ漠然と風景の美しさに惹かれてシャッターを押すのと違い、風景の中の何を人に伝えたいかを考えながら、ファインダーを覗いてみると、同じ風景でも全く違う印象の写真が出来上がります。

 勿論プロの写真家に見せたら、まだまだ未熟な写真ばかりですが、それでも自分のアルバムは、今回の本をきっかけに大きく変わったなと、自負しています。

 人間の欲求にはきりがないもので、完成した本に満足しながら、頭の中は次の事を考えてわくわくしています。まずは写真の技術も向上させたいし、小説なんかも書いてみちゃおうかしら・・・なんて、夢見るだけなら自由ですものね。やった事のないものに初挑戦を、これからもずっと続けていけたらいいなと、贅沢な夢を描いています。

 


 

 

 

 

 

 

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